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https://w.atwiki.jp/powerhandle/pages/17.html
非公式ビルド ncurses Cygwinでzaurus用にクロスコンパイルしたものです。 ncurses は GUI ではなくテキストでインターフェースを作成するライブラリです。termcap、terminfo の役割も果たしています。 terminfo データベースをすべてインストールするとアーカイブが大きくなってしまう(恐らくほとんど使わない)ので、データベースは別パッケージとしました。デフォルトでデータベースに入れたのは、linux vt100 xterm kterm ansi dumb の6個のみです。必要なものがあれば、別途アーカイブを母艦などで展開して zaurus にコピーしてください。zaurus でのファイルの保存場所は /home/QtPalmtop/share/terminfo/ 以下の各ディレクトリです。各ディレクトリはターミナル名の頭文字です。 参考ドキュメント Terminfo と Termcap (詳細) ダウンロード ncurses_5.6-1_arm.ipk (150,400B) ncurses-5.6 [zaurus] md5sum 85efdf87b7378c3ad45da2a7f5fc914b gcc version 2.95.3 20010315 (release) ncurses-5.6-terminfo.tar.gz (307,892B) ncurses-5.6 md5sum a5149641b06a7fe85be60dcd57fb9b93 インストール 依存するパッケージはありません。「ソフトウェアの追加/削除」でインストールします。
https://w.atwiki.jp/powerhandle/pages/15.html
非公式ビルド zlib Cygwinでzaurus用にクロスコンパイルしたものです。 zlib はデータ圧縮・伸張用のライブラリです。 ダウンロード zlib_1.2.3-1_arm.ipk (36,508B) zlib-1.2.3 [zaurus] md5sum 757d6393f1e22189671a6edf49e667aa gcc version 2.95.3 20010315 (release) インストール 依存するパッケージはありません。「ソフトウェアの追加/削除」でインストールします。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2381.html
ルイズ…フランソワーズ…ラ…ヴァリエールは召喚のルーンを唱えていた 五つの力を司るペンタゴンと始祖ブリミルに、宇宙のどこかに居る「最強」の使い魔を乞うた 爆発 「平民だ!ゼロのルイズが平民の男を召喚したぞ」 「こ………これは無効です!ミスタ…コルベールやり直しを要求します!」 一度きりのサモン…サーヴァント、コルベールは無情にも契約の儀式を要求した ………なんでわたしが平民の男なんかに………キ………キスなんて………感謝しなさいよね……… その男は軍服に似た奇妙な黒い上下揃いの服に身を包んだ大男だった、そして、威嚇的に尖った金色の髪 ………でも、ちょっといい男かも………… ルイズが震えながら行った口づけで目を開いた男は、地の底から響くような無気味な声を発した 「……………………俺は…………………………誰だ……………………………」 ルイズが召喚したのは、横浜と呼ばれる異世界で最凶の名をほしいままにした男だった その時、男の左手、鋭角を描く金色の髪を持つ男の手が青白く輝き始めた、使い魔のルーンの刻印 「…………ぐぅ…………ゴッガァ…………ガァアアアアア!……………疼く…………疼くぜぇ!!」 左手から薄っすらと煙を立てながら血も凍るような叫びを発した男、他の生徒が恐れるそれにルイズは近づく 「あ………あなた………あなたは今日から、このルイズ…フランソワーズ…ラ…ヴァリエールの使い魔よ!」 その男はルイズを見下ろした、人間というより獣に近いような瞳、鈍感なルイズは今更震えあがった 「ハ………ハッハッハハハハ…………面白ぇぞぉ!お前!」 男はルイズの後頭部を掴み、そのまま持ち上げた、宙吊りになったルイズのパンツに小便の染みが出来る 「…………おぅ…………"ルイズ"ぅ……………今日から貴様は……………"魍魎"だぁ…………」 武丸は学院の食堂を歩いていた、歩くのに邪魔になる椅子やテーブルや生徒は蹴りどかした ギーシュが居た、鈍感さでは校内随一の彼は背後に迫る悪魔にも気づかず女生徒達と話している 武丸の視界に入ったのは震える生徒や引っくり返ったテーブルではなく、床に転がる香水のガラス瓶だった 「…………歩けねぇじゃねえか………俺の"邪魔"をしようってのは………誰だ?…………"面白ぇ"ぞ」 ギーシュが振り向く、目の前の男の迫力に呑まれながら、この男は背後に女のコ達の視線を意識した 「こ………こら………そこの使い魔…………それはボクの香水だ………返したまえ…………返し………てくだ……さい」 武丸がギーシュを見る 「…………………………………………………………………………あ?………………………………………………………………」 「ご………ごめんなさいすぐ拾います!怒んないでください!ボク武丸さんのファンなんです、ホラ髪型も………」 ギーシュが床に土下座しながら自分のリーゼントを見せたところ、武丸はなんと笑顔を見せた 「おぅ"ギーシュ”ちゃぁ~ん、なぁ~にブルってんのよ?………マルトー、コイツに"カナダドライ"ひとつ」 ギーシュは目の前のグラスに注がれたジンジャーエールを見て安心した顔をする、恐る恐る手を伸ばす 「あ………あの………感激です………武丸さんにこんなのオゴってもらうなんて………」 武丸はテーブルの上のグラスをギーシュの手ごと拳で割り砕いた、テーブルからガラスの破片と鮮血が飛ぶ 「ぐ………ぐひゃぁぁぁ!!…………いでぇぇえええ!…………すんませんごめんなさいごめんなさいィィ!」 「…………てめーらぁ!…………"魍魎"はなぁ…………"無敵"になるぜぇ………ハ…………ハァーッハッハァ!」 第二部執筆未定
https://w.atwiki.jp/gogosunche/pages/4.html
ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 ウィキペディアを作ったiMacが箱付きで競売に登場。予想落札価格は約96万円!(ギズモード・ジャパン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース メトロイド ドレッド攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ツムツム攻略Wiki|ゲームエイト - Game8[ゲームエイト] 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) アイプラ攻略Wiki|アイドリープライド - AppMedia(アップメディア) Among Us攻略Wiki【アマングアス・アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」:時事ドットコム - 時事通信 マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - PR TIMES 【Apex Legends】ヴァルキリーの能力と評価【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) モンハンライズ攻略Wiki|MHRise - AppMedia(アップメディア) ポケモンBDSP(ダイパリメイク)攻略wiki - AppMedia(アップメディア) SlackからWikiへ!シームレスな文章作成・共有が可能な「GROWIBot」リリース - アットプレス(プレスリリース) 【ウマ娘】チャンピオンズミーティングの攻略まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ナリタブライアンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ヒシアケボノの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】カレンチャンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】フジキセキの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【スタオケ】カード一覧【金色のコルダスターライトオーケストラ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】ソラのコンボと評価【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ブレフロレゾナ】リセマラ当たりランキング【ブレイブフロンティアレゾナ】 - ブレフロR攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトの評価と性能詳細【UNITE】 - Gamerch(ゲーマチ) 仲村トオル、共演者は事前に“Wiki調べ”(オリコン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ENDER LILIES】攻略チャートと全体マップ【エンダーリリィズ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】あんしん笹針師の選択肢はどれを選ぶべき? 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https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1798.html
ゴング。 同時にレフェリーを務めるコルベールが、リング上で拳を交える二人を引き離す。 「ゴング! ゴングだ!」 双方は一瞬にらみ合った後に振り返り、肩で息をしながらもしっかりとした足取りでニュートラルコーナーへと戻った。 セコンドにより椅子が出され、一分間で少しでも体力を回復するための道具が次々と取り出される。 赤コーナーの椅子へ座り込んだのは、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 現在、HBC(ハルケギニアボクシング評議会)のランキング3位に属する、異例の女性ボクサーである。 ぶかぶかの赤いボクシングパンツに、白い無地のTシャツを着ていた。 「ルイズ、やったじゃねぇか! あいつのフィニッシュブローを破ったぜ!」 セコンドの一人を務めるのは、腹巻に坊主頭、左目の眼帯と異様な格好の中年男性だ。 名を、丹下段平。ルイズによってこのハルケギニアに召喚された、かつて異世界で名を馳せた名ボクサーである。 「あれだけ特訓したんだから、当然でしょ! 次のラウンドで勝負をかけるわ!」 疲労困憊であるにも関わらず、ルイズはニヤリと笑ってみせる。 「動かないで」 腫れ上がったルイズの顔を、魔法で出した氷で冷やしていたタバサが呟いた。 ルイズの級友である彼女もまた、セコンドを勤める一人である。 「それにしても、まさかあんたが本当にここまで強くなるとはね……。 女の癖にボクシングなんてバカじゃないかと思ったけど、あんた才能あるのね」 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが呆れたように漏らした。 その名の通り、ツェルプストー家の一員である彼女は、ヴァリエール家のルイズとはまさしく犬猿の仲である。 が、ルイズが「ボクシングやるから。絶対やるから。もう決めたから」とぬかし、 周囲を仰天の嵐に巻き込んだ際、初めにそれを応援した人間でもあった。 要は、何だかんだ言って親友なのである。 『微熱』の通り名を持ち、恋に生きると公言してはばからないような女性であるキュルケにとって、 その理由が納得いくものだったからかもしれない。 「そりゃそうでしょ」 ルイズが真顔に戻り、呟いた。 「絶対サイトの仇を討つって決めたから。そう、誓ったんだから」 そうして、向かいの青コーナーを睨みつける。 そこには、不適に笑う元婚約者――HBC現王者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの姿があった。 ハルケギニア大陸において、ボクシングとは全てである。 六千年前、ブリミルと呼ばれる人物が編み出したとされるその競技は、瞬く間に大陸全土へと広がった。 現在において、各国の代表を出す国際戦が最早代理戦争と化していることからも、その人気ぶりは知れよう。 そして、貴族の誇りとは、強いボクサーであることであり、即ちボクシングで勝つことである。 現在を生きる全ての貴族の男子にとって、ボクシングで強くなるのは確固たる目標であり、遥か遠い夢だ。 HBC上位ランカーともなれば、下級貴族の三男坊などでも結婚相手は選び放題、生涯の成功は最早約束されたと言ってもいい。 その妻も、夫の試合となれば必ずセコンドに立ち、声を枯らして応援。 勝てば抱き合ってリング上で接吻し、負ければ控え室で涙を流した。 『俺のセコンドに立ってくれないか』というプロポーズの言葉は、最早使われすぎて陳腐であるにも関わらず 『好きな異性に言いたい/言われたい台詞ランキング』で132年連続一位ぶっちぎり独走中。 ちなみにランキングの集計が始まったのは132年前である。 要は。どいつもこいつも、バカみたいにボクシングに燃えているのだ。 ルイズが、使い魔契約の儀式で異世界の二人――平賀才人と丹下段平を召喚したのは、もう二年前のことになる。 二人はやがて、ボクサーとセコンドとしてHBCランキングへ参加。 グローブをはめると身体能力が向上するという、伝説の『ガンダールヴ』のルーン、丹下段平のやたら根性部分に特化した指導、 喋るインテリジェンスグローブ『デルフリンガー』などもあり、瞬く間に上位へと上り詰めた。 しかし、その年のトリステイン王国代表決定戦。決勝戦において、ワルドの繰り出したフィニッシュブロー、 『ライトニング・クラウド・アッパー』によって、終始優位にあった才人は逆転負けした。 ルイズはその時、婚約者と使い魔、どちらのセコンドに着くか悩んだ挙句、賓客用観客席という中途半端な立ち位置に居た。 そして見たのだ。絶対に見た。二人がコーナーで戦っていたせいで、自分以外には誰にも見えなかったろうが、 しかしそれは確かだったとルイズは確信している。 フィニッシュブローを撃つ瞬間、ワルドは才人の足を踏んでいた。 そして、試合終了から三時間十二分後。 平賀才人は、絶命した。 試合から数日後。 ルイズは、ワルドを問い詰めた。何故だ。何故、あんなことをしたのか。 ワルドは哂った。高らかに哂っていた。 「まずい、まずいんだよルイズ。あそこで負けてしまっては、僕はルイズと結婚出来ない。 ヴァリエール家の麗しきご令嬢と結婚するんだ、HBC現王者くらいの立場は必要だろう?」 くくく、と堪えきれない哂いを漏らす。その眼は、何か名状しがたきものに侵されていた。 明らかに尋常では無い様子に、表情を硬くするルイズ。 その腕を突然、ワルドが掴む。 「さぁ、もう十分だろうルイズ。僕はHBCの頂点、ハルケギニアにおける全ての男子の頂点に立ち、九回それを守り抜いた。 かつての伝説、『イーヴァルディの闘士』と並ぶ大記録。ああ、ああもう十分だ、そうだろう? 君と僕は結ばれる。誰にも邪魔はできない。そして君の、『虚無の拳』の力がついに――!」 恐怖。しかし、それ以上にルイズの心を埋め尽くしたのは、憤怒だった。 ルイズは腕を振り解き、ワルドを睨みつける。それを気にもせず、相変わらず、哂い続けているワルド。 ワルド――いや、こいつが何を言っているのかはわからない。 だけど。 これだけはわかる。 「そんなことのために……!」 その目的は、あいつ――才人に比べれば、屑にも劣る最低の代物だということだけは。 「サイトを……!」 あいつを。いつまで経っても従おうとしなかった、小憎たらしい使い魔を。給仕やら、他の女性にすぐ傾く惚れっぽいあいつを。 でも、……どうしようも無い程、どうしようも無くなる程に好きだったサイトを! 「殺したのねっ!」 ルイズは先日の自分を悔やんだ。何故、自分はこいつとサイトを比べて、しかも迷いなんてしたんだろう。 こんなにも。こんなにも、私の気持ちは分かりきっているというのに! 「……いいわ。あなたがもう一度だけ、その王座を守りきったなら、私はあなたの妻になる」 「どうしたんだい? 僕の愛しいルイズ。別に、今すぐにでも僕は構わな――」 「その口で、次に『愛しい』と言って御覧なさい。――その口、引きちぎってやるから」 ワルドは哂い止み、値踏みするような眼でルイズをじろり、と眺めた。 完全に様子は一変し、実につまらなそうな、退屈そうな眼をしている。 「ふん。……成る程。君は僕の、『敵』になったと、そういうことなのかな、ルイズ?」 「ええ。完膚無きまでにね、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド」 「くくく。もう『ワルド様』とは呼んでくれないのだね、僕のルイズ。 だが、まぁいい。僕が次に勝ちさえすれば、全ては問題とはならない。 いくら君が反対しようとも、前人未到のHBC王座十連続防衛を果たした男となれば――君のお父上にほんの少し働きかければ済むことさ。 それで? 残りの一回、君は誰をけしかけるつもりなのかな?」 馬鹿にしきった様子のワルドを前に、しかしルイズは動じなかった。 眼を煌々と光らせ、胸を張り、怒りの炎に身を焼いて、誰よりも誇り高く、彼女はそこに居た。 「私よ。私自身が、あなたに挑む」 「セコンドアウト!」 ロープを乗り越えながら、ルイズのセコンド達が次々に声をかける。 「いいか、ルイズ。足だ、足を使え。かき回した所に、お前のフィニッシュブローを叩き込んでやりな!」 「……本で読んだ言葉。あなたに。……Stand, and Fight.(立って、そして戦いなさい)」 「頑張りなさいよ。サイトのためなんでしょ?」 ルイズは僅かに微笑みをこぼし、そして相対する敵へと向かっていった。 着ているTシャツを握り締める。かつて、彼女の使い魔がこの世界に召喚された時に着ていたものだ。 「サイト」 何かを噛み締めるように、ルイズはその使い魔の名前を呟く。 「らぅーん、えいと! ふぁいっ!」 ゴング。 開幕直後、ワルドは冷静に牽制の左を放つ。 速く、鋭く、確かな芯のあるジャブ。『エア・ニードル・ジャブ』。 『閃光』の二つ名の元になった、ワルドの主武器の一つである。 ルイズも動じず、ステップとガードで対処する。 しばし、静かな攻防。盛り上がる観客席とは正反対に、凍りついたような緊張感がリングには満ちていた。 ――と、その空気を打ち破るかのように、ワルドが大きく下がる。 そのまま腕を広げ、オープンガード。そして、あろうことか対戦相手であるルイズへと話しかけた。 「いや、驚いたよルイズ。まさか、君が――君自身が! 僕に挑むと聞いたときには、正直正気を疑ったがね。 僕の『ライトニング・クラウド・アッパー』を破るとは、やるじゃないか」 『ライトニング・クラウド・アッパー』。ワルドが幾多もの敵をリングに沈めてきた、彼の必殺技である。 その拳は相手に命中すると同時に、グローブすら焼き尽くす強力な電撃を発し、その動きを止める。 ガードも不可能、当たったらそこで終わり。まさしく、『フィニッシュ』ブローだ。 (尚、スレ住人の皆さんは技のあまりのネーミングセンスに眉をひそめていることだろうが、 これは筆者の趣味では無く、名作ボクシング漫画――アレをボクシングと呼称するのなら、という前提だが―― 『リングにかけろ』へのリスペクトである。知らない人はググってwikipedia。すげーネーミングだから) ルイズは警戒。試合中に対戦相手に話しかけるなど、正気の沙汰ではない。コルベールが困っている。 「驚いたよ。本当に驚いた。まさか、『虚無の拳』の力を、僅かとはいえ引き出すとはね。 それに敬意を表して――僕の、正真正銘、本当の本気を見せるとしよう!」 そう言い放つと、ワルドは突然詠唱を始める。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 ルイズはワルドへと突き進んだ。まずい。何の詠唱をしているのかはわからないが、本能が告げている。 あの呪文を、完成させてはならないと。 「っ!」 ワルドの顔面へ、右ストレートを放つ。 そして、誰もがその眼を疑う光景。 その拳が、ワルドの頬を『貫通』した。 「!」 驚愕に凍り、動きが止まるルイズ。面前のワルドの姿が、かき消える。 そして、 「ユビキタス。――風は、遍在する」 ルイズの背後。そこに、五人のワルドが立っていた。 振り返ったルイズの顔が、更なる驚愕で歪む。 「風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」 ルイズは混乱しながらも、必死でジャブをうつ。 涼しい顔でそれを防ぐ、ワルドの一人。 「物理的影響力を持ち、ある程度の衝撃なら消えることもない。そのそれぞれが意思を持っている。 ――どうだい、僕の愛しいルイズ? これが僕の、本気だよ」 一人がルイズのパンチをガードしている間に、もう一人が懐に潜り込み、ルイズの気をそらす。 更に二人が牽制のジャブを放つ。 「くっ!」 ルイズは必死で、それをかわそうと『イリュージョン・ステップ』を使う。 自分自身の幻影を作り出し、敵を翻弄する足捌き。 先ほど『ライトニング・クラウド・アッパー』を破ったのもこの技だ。 しかし、 「無駄だ!」 そして、最後の一人はルイズの死角へと回り込んで―― 「これで終わりだ! 『エア・ハンマー・フック』!」 「――――!」 空気の塊を伴った拳は、その力を元の数倍にまで増大。 ルイズの顔面を捉え、悲鳴をあげることすら許さず数メイルの距離を吹き飛ばした! きもちいい。 なんだか、すごくきもちいい。 めのまえがぐにゃぐにゃする。なにもみえないや。 ああ、ねちゃいそうだなぁ。 「――――!」 なんだか、とおくでたくさんのひとがさわいでる。 うるさいなぁ。 わたしはもう、ねたいのに。 「――――!」 ああもう、ほんとうにうるさい。 たちあがることなんて、もうできないのに。 「――って!」 え? いま、なんて……。 「立って! ルイズ!」 リング上、ピクリともしないルイズ。勝ち誇り、ロープへもたれかかるワルド(×5)。 それを見つめながら、キュルケは呻く。 「分身……。ボクシングで五対一なんて、勝てるわけがないじゃない……!」 「…………」 無言のままのタバサ。 3。 「ちくしょう……。ルイズは、ルイズはあんなに頑張ったのによぅ……!」 丹下は俯き、何かを堪えるように歯を食いしばっていた。 「…………」 無言のままのタバサ。 5。 「……限界ね」 倒れたまま動かない姿を見、キュルケがタオルを取り出す。 止める丹下。 「待て! そいつぁダメだ! ルイズを、あいつの気持ちを裏切るつもりか!」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」 「せめて、10カウントの間は――」 「一刻を争う状況だったらどうするつもりなの!? その数秒が、あの子を殺すかもしれないのよ!」 「…………」 無言のままのタバサ。 8。 「ダメだ! そいつはやらせられねぇ!」 丹下がキュルケに、タオルを投げさせまいと食らいつく。 そうしながらも、叫ぶ。 「立(て! 立つんだ、ルイズ!)――」 「立って!」 割り込むかのような突然のタバサの絶叫に、丹下は言葉を止められてしまう。 タバサはルイズを見つめ、何かを訴えるように、目に涙を浮かべながらも叫ぶ! 「立って! ルイズ!」 その一言で、心臓に火が入った。 足が動かない。 頭はグラグラだ。 体中が痛みを訴えている。 ――それでも。 その全てを屈服させて、ルイズは立ち上がった。カウントは、9。 霞む視界の中、リング下のタバサを捉える。 そちらに向けて、頷いた。 ――そうだ。 驚くワルドが見える。 ――負けられない。 足を一歩、動かす。 ――絶対に、 「負けないんだからっ……!」 ワルド達が、再びルイズへ襲い掛かる。 先手を取り、重い左手を必死で動かして、ジャブ。 どうしようもなく鈍いそれを、ワルドは苦も無くガードした。 先ほどと同じ流れか、と誰もが思ったその瞬間。 ガードをしたワルドが、跡形も無く消え去っていた。 「な――!」 驚きで動きを止めるワルド達。馬鹿な。あの程度のパンチで、分身が消え去るなどあり得ない。 更に連続でルイズのジャブが放たれる。 一発。一人のワルドが消える。 一発。また一人のワルドが消える。 残るワルドは、二人。 「馬鹿な、そんな筈は!」 混乱するワルド。そこに、ルイズがぽつりと、だが確かな強い声でその技の名前を告げた。 「――『ディスペル・ジャブ』」 「っ! 『解除』したというのか、僕の分身を!」 更に、一発。更にワルドが消えうせる。 残るは本体。たった一人の、ワルドのみだ。 「僕は……僕は負けないっ! 『虚無の拳』を手に入れ、ボクシング界の全てを手に入れるまで、決して!」 錯乱したワルドが、ルイズへ吶喊する! 「あ、ああああああああああああああっ!」 再び、『ライトニング・クラウド・アッパー』を放つ。 決まれば、間違いなく終わる。その威力を秘めた一撃。 しかし。その技は既に―― 「ああああああああああああああっ!」 命中! ワルドの眼に、電撃に撃たれながら吹っ飛んでいくルイズの姿が映る! 「あああああああああああああ、ああ、あ……?」 再び倒れるルイズ。電撃で体中が焼け焦げ、見る影も無い。 「あ、ああ、は、ははははははは! 勝った! 『虚無』に、伝説に、僕は勝ったんだ!」 ワルドは気づくべきだった。 ルイズにその拳が命中した――否、そう見えた瞬間。 しかしそれに反して、その手には何の感触も無かったことに。 倒れていたルイズの姿が消える。 「ははははははははっはああははは、はぁ? あれ?」 『イリュージョン・ステップ』。 そして、 「喰らいなさいっ! サイトの――仇っ!」 ワルドの目の前から放たれた拳は、 「『スマッシュ』――」 その顎にクリーンヒットし、 「――『エクスプロージョン』!」 大爆発によって、ワルドを上空十数メイルまで吹き飛ばした! 一瞬の沈黙。 その会場にいた全ての人間が、歓声一つ上げず、、空中のワルドを見つめていた。 ぐしゃり。 何かが潰れるような音と共に、ワルドがリング外へ顔面から墜落する。 コルベールがそれを覗き込み、――その両腕を、頭上で交差させた。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 歓声が爆発し、ゴングはこれでもかと鳴り響く! 「やった! ついにやったぜ、ルイズ!」 「……やった」 「あの、バカ……! 心配させて……!」 コルベールがルイズの腕を、高々と掲げる。更に音を増していく観客の声援。 腕を下ろされたルイズは、その中を、ふらふらとニュートラルコーナーへ戻る。 「っ! タンゲ! 椅子!」 「言われるまでもねぇわっ!」 出された椅子に、崩れるように座り込むルイズ。 「ちょっとルイズ? 体は、大丈夫なの?」 「待ってろ。今、わしがとっておきの薬を――」 「要らない。水のメイジが医務室からすぐに来る」 「ルイズ? ……ちょっとルイズ? ルイズ!」 「おいルイズ! 返事しねぇか!」 「…………救護班、早く!」 ねぇ、サイト。 やったよ。 私、あんたの仇を討った。 サイト。 もう一度だけでも、あんたに会いたいわ。 言いたいことがあるのよ。 前には言えなかったけど、今なら、素直になれそうな気がする。 でも。 燃え尽きちゃった。 燃え尽きちゃったわ。 真っ白にね……。
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの人生とは、 這い寄る闇からの逃走劇も同然だった。 魔法が使えないこと、身体が幼いこと、他人に認められないこと――。 それら闇から逃れるため、ありとあらゆる努力を重ね、研磨し、足掻いた。 ――それでも、何も変わらなかった。 いくら呪文を知っていても、魔法は使えない。 いくら健康になっても、身体は育たない。 いくら貴族として立ち振る舞っても、誰も認めない。 逃げても逃げても追ってくる闇――だが、幸か不幸か、今までそれに捕らわれる事は無かった。 魔法が使えなくても、学園が自分を放り出すことは無かったし、 身体が幼くても、どうしても気を引きたい相手などはいないし、 他人が認めなくても、自分はれっきとした貴族だって分かっている。 けれど、もうここまでだ。 この学園では、2年生への進級するための儀式として、『使い魔の召喚』がある。 今までに一度たりとも魔法を成功させたことの無い自分に、できるはずもない。 案の定、呪文を唱える度に、地面を爆発させた。 他の生徒たちの嘲笑が聞こえる。文句が聞こえる。罵倒が聞こえる。 ――本当は、分かっていたのだ。 魔法が使えなくては、進級できない。 身体が幼くては、婚約者は去るかもしれない。 他人が認めなくては、貴族にはなれない。 それでも、足掻きたかった。 ちっぽけな希望を抱き、この闇を打ち破り、この広い世界に歩みだしたかった。 闇はすぐ後ろにいる。 未来までも黒で覆い、光を奪おうとしている。 お前は、何者にもなれないと、絶望を突きつけようと―― ――そうして、その使い魔は現れた。 ルイズは、その使い魔を召喚したときのことを、一生忘れないだろう。 その姿を目にした瞬間、自らを覆おうとしていた闇は、一瞬で消し飛んだ。 灰色の世界に光が射し込み、自分を、世界を、輝かせる。 ――もう、何も怖くない! 魔法が使えなくても、この使い魔がいれば何でも出来る! 身体が幼くても、この使い魔がいれば何も言わせない! 他人に認められなくても、この使い魔がいれば何も要らない! ショボイ魔法などどうでもよくなり、 チンケなコンプレックスは消え去り、 周囲の視線は、畏怖と羨望の視線となった! 吊り上っていた眼は、絶対なる意志を持ち、 追い立てられるような歩きは、王者の余裕を持ち、 張り詰めていた雰囲気は、覇王のようなカリスマあるものへと変わった! 使い魔が自らと在る限り、 自分に出来ないことなど無いのだと、 自分は何処へでも行けると、ルイズは確信した! ――そう、ルイズは、果てしなく続く戦いの道(ロード)へ歩み始めたのだ!! 喧嘩売って来た色ボケメイジを、ぶっ飛ばしてやった。 悪名高い盗賊を、その僕の巨大なゴーレムごと吹き飛ばしてやった。 国と自分を裏切った婚約者を、そのお仲間諸共消し飛ばしてやった! ルイズは止まらない。 何者にもルイズは止められない! ――そして今! 眼下には、卑劣にも条約を破り、攻め込んできたアルビオン軍が展開している。 「こないだ、アルビオンで躾けてやったというのに……まだ足りないらしいわね」 虫けらを見るような目で――事実、そう思っているのだろう――白の国のゴミクズどもを眺める。 「ならば教えてやるわ……この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのいる、 そして、我が最強のしもべのいる、このトリステイン王国に攻め込んできた、その愚かさを――!!」 ルイズは緩やかに右手を上げる。 それは、ルイズがしもべに敵の殲滅を指示する、号令なのだ――! ルイズは高らかに謳い上げる――破壊を告げる言葉を! 「滅 び の ッ ! バ ァ ァ ァ ス ト ス ト リ ィ ィ ィ ィ ィ ム ッ ッ ! !」 その瞬間――。 青き眼の、白き最強龍は、口内から光を放つ――! それは、あらゆるものを滅ぼす、破壊の光――!! 「強 靭 ッ ! 無 敵 ッ ! 最 強 ォ ―― !!」 光は全てを飲み込んでいく! 戦艦を蹴散らし、ブチ壊し、滅茶苦茶にしていく! 竜騎兵など蝿も同然! 地べたを這いずるメイジや兵士どもなど、塵芥に等しい! 「粉 砕 ッ ! 玉 砕 ッ ! 大 ・ 喝 ・ 采 ―― !!」 何が来ようと、何も恐れることは無い。 我がしもべ、『青眼の白龍』の前には、全てが平伏すのだ――! 「ワハハハハハハハハハハ―――――!!」 その後、ルイズは『滅び』の二つ名と、 ありとあらゆる名誉を手にいれ、トリステイン最強の力として、君臨した。 ルイズは最期まで魔法を使えなかった。 ルイズは最期まで体系はお子様だった。 ルイズは最期までメイジとは認められなかった。 だが―― ルイズは『力』を使えた。 ルイズはあらゆる名家の男たちから誘いがあった。 ルイズは至上最強の竜騎兵として認められた。 そして、友も得た。 ルイズは未来を切り裂き、幸せを手に入れた。 そして、これからも、ルイズは止まらない! ルイズの踏み出した道――それが未来となるのだから――! 「ずっと私のターン!!」 『滅びのルイズ』…… 完 -「遊戯王」より青眼の白龍を召喚
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「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、答えなさいっ!!」 数十回の使い魔召喚に失敗し、ヤケッパチ気味にルイズが叫ぶ。 その、ある意味高望み過ぎる内容に周囲の同級生は「おいおい」と思ったとか思わなかったとか。 だが、神か仏かブリミルにか、彼女の願いは聞き届けられたのだった。 宇宙の果てのどこかにいる神聖で美しく強力な「なにか」の前に、召喚のゲートは開いたのである。 ★★★★ 異次元空間に浮かぶ壮麗にして典雅なる白亜の城の、丹精に手入れされた中庭。 そこで『世界の守護者』アンゼロットは日課である午後の紅茶の時間を楽しんでいた。 見た目は12歳程度の美少女に見える。 黒いドレスに映えるどこまでも白い肌。月光を束ねて銀糸にしたかのような流れる髪。 同じく銀色の瞳が、世界の行く末を思ってか儚く潤んでいた。 ふうっ―――と小さくため息をつけば、少女の手の中でユラユラと揺れるダージリンティーの水面。 お茶請けは配下のロンギヌス特別茶菓子班が泣きながら焼いたお煎餅。 紅茶にセンベイ合わすなよというツッコミも涼しげに無視して、外見銀髪少女の大年増は優雅にセンベイ食う。 バリンバリンバリバリバリバリバリリッ――ふう、やはり紅茶のお供はノリ煎餅ですわね――ってなカンジで優雅に。 そんな彼女の前に、突然銀色の円盤が現われた。 ここは腐っても、精鋭部隊ロンギヌスが守る正義の砦アンゼロット宮殿。 シナリオの都合でさえなければ簡単に危険な異物や敵の侵入を許す場所では無いのに、その円盤は平然と宮殿の主である少女の側に浮かんでいた。 レベル∞を誇る世界の守護者アンゼロットは、それが使い魔召喚のための次元ポートである事を瞬時に見抜く。 そして煎餅のカケラほども躊躇も見せず、その中にレースで飾られた黒いドレスに包まれた腕を突っ込んだ。グイっと。 「んー、このへんでしょうかねぇー……っと、コレですわ!」 中でグリグリ手を動かして、ズバッと一本釣りで引き抜いたのはピンクの髪の少女。 いきなり空中に現われた腕に襟首を掴まれて見知らぬ場所に釣れて来られた少女は、驚愕と不安であたりをキョロキョロ見回している。 「なななななななに? なんなのよここ? いったい突然何がおこったのよ!?」 「はーい、落ち着いて下さいルイズさん。私は『世界の守護者』アンゼロット。 今から私がするお願いに、ハイかイエスでお返事して下さいね?」 「へっ?」 「ハルケギニアは世界の敵に狙われています。貴女にはこれから、その敵を倒すために戦ってもらわなければいけません」 「ええっ!?」 「とは言え、今のルイズさんのレベルでは少々心もとないので―――」 今度は何も無い空間にズボッと手を突っ込むアンゼロット。 しばらくグリグリして「えいっ」と引き抜けば制服姿の少年が投げ出され、アンゼロットとルイズの頭上を跳び越し、頭から地面に落とされた。 「ってえなぁ! イキナリ授業中になにしやがんだこのクソ年増!」 ヤバい角度で地面に突っ込んだ男の様子に(なんだか知らないけど生きてるのかしらこの人?)と心配するルイズの前で、 素早く立ち直ってアンゼロットに詰め寄るのは柊蓮司。 一見普通の不良学生だが、その正体は色々下がる不幸学生だ。 以前、使命だと言われて学年が2年生から1年生に下がるという理不尽も体験した事がある。 「まぁまぁ落ち着いて下さい柊さん。まずは紅茶でも飲んでお煎餅でも食べて」 「いやお前煎餅と紅茶の組み合わせはねーだろう普通。まぁもらうけど」 「では紅茶も飲んで落ち着いた所で本題ですが」 「早っ! まだ一口しか飲んでねぇって言うか椅子にも座ってねぇって!」 「使命です。世界の滅びを防ぐために、そこのルイズさんは6レベルまで成長しなければなりません」 柊の剣幕もツッコミも無視して、さっさと使命の説明に入るアンゼロット。馴れた対応だ。 柊の方もそんなアンゼロットには慣れたもので、白いロココ調の上品な椅子をガタガタと引いて、ドカっと行儀悪く座って話を聞く体勢に入った。 「ルイズって言ったか? アンタも座ったらどーだ?」 「えっ、あっ、う……うん」 ちょっと恐い外見の柊に椅子を勧められて、まだ混乱中ながらおずおずと着席するルイズ。 その間にもアンゼロットはマイペースで話を続ける。 「ルイズさんが実戦経験を積み、かつレベルアップしてもらうために柊蓮司さん、 貴方の向かう使命へ彼女を共に連れて行き、そこで一緒に戦ってあげて下さい」 「良いけど、俺とこの子じゃレベルが違いすぎじゃないのか?」 「ご安心を。柊さんが飲んだその紅茶に、ある薬を入れてありますから」 「なっ―――まさか!?」 不吉な言葉に絶句する柊。 以前彼はアンゼロットが紅茶に入れたという薬のせいで、レベルを下げられた事がある。 それなのに同じ手に二度も引っ掛かるあたりが、彼の人の良い所だろう。 「柊さんもルイズさんと同じ1レベルになりましたから、頑張ってレベルアップして下さいね」 にこやかに手を振るアンゼロットの笑顔にヤバイと感じて立ち上がろうとする柊だったが、もう遅い。 突然椅子の下に、底も見えない黒い穴が現われる。 柊と、そしてルイズはそのまま侵魔――エミュレイター――と呼ばれる『世界の敵』が跋扈する戦場へと、次元を超えて落下させられた。 「いってらっしゃーい柊さーん♪」 「コノヤロウ覚えてやがれーっ!!」 「きゃー! なんなのよ、なんだっていうのよー!?」 「ちなみに柊さんが私の事を年増呼ばわりしたので敵のレベルはちょっぴり高めでーす♪」 「うわーっ! しっかり恨んでやがったかー!?」 「はわわわーっ!?」 ドップラー効果と共に遠くなって消える二人の声ってゆーか悲鳴。 何度となく世界を救ったウィザード、下がる男・柊蓮司。 彼は一部事情通の間では『アンゼロットのオモチャ』とも呼ばれているのだった。 ★★★★ その日、ゴーレムが学院を襲っていた。 宝物庫まある階に巨大な拳を打ち込むゴーレムは、30メイルはあろうかという巨大な物だ。 「待ちなさい!」 「……なんだい、アンタは?」 誰もが恐れて逃げ出す巨大ゴーレムの前に立ち塞がったのは、ルイズ・フランソワーズ。 3週間ほど前に行方不明になり、先週突如ボロボロの姿で学院に帰ってきた少女だった。 「魔法も使えないメイジが何の用だい? 世をはかなんでアタシのゴーレムに潰されたいってんなら相談に乗ってやるよ?」 「やれるモンならやってみなさいよ、土くれのフーケ」 「ふん、じゃあお望み通りにしてやるさ!」 ゴーレムの拳がルイズを押し潰した―――かに見えた。 だがルイズは平然とその場に立ったままだ。 彼女の手前数センチで止まった巨大な鋼鉄の拳。当然、それはフーケが止めたのではない。 ルイズの周囲に展開された結界・月衣<カグヤ>。 それは世界そのものが持つ法則を無視して、持ち主を一切の物理法則から守る極小の異世界だ。 「わ、私のゴーレムの拳を防いだ!?」 「……魔法の使えないメイジじゃ、ないわよ」 「なんだって?」 「メイジじゃないって言ったのよ!」 月衣の中から背丈ほどもある長剣を引き抜き、構えるルイズ。 それは≪魔剣使い≫である彼女の力、近接戦用対魔法箒・デルフリンガー。 「……って、俺っち箒扱いかよウイザードの嬢ちゃんよぉ」 「私はウィザード! エミュレイターと戦う、夜闇の魔法使い・ナイトウィザードよ!」 ウィザード業界では、魔力を受けて機動する道具は剣でも銃でも盾でも、果ては宇宙船でも箒なのだからしょうがない。 デルフのぼやきは無視して、ルイズは声高々と宣言した。 ≪魔器開放≫によって真の力を解放したデルフリンガーが輝く。 魔法構造を崩壊させる≪魔力吸収≫の特殊能力が、刃に触れたものから尽く魔力を奪おうと唸りをあげた。 ≪封印されし力≫を解放したルイズの≪虚無の属性≫魔法がその刃に吸収される。 あふれ出るプラーナの力が大地を削って噴き上がり、周囲を黄金の光で照らす。 「ば、ばかな!? なんだいこの力……こんな魔法、わたしは知らない!?」 「受けてみなさい! これが私の召喚した使い魔、世界の守護者から無理矢理与えられた力よ!」 一閃。 ただの一撃で右脇腹から左の肩まで一直線に切り裂かれ、その傷口からボロボロと崩壊してゆくフーケのゴーレム。 自身を構成するための魔力を根こそぎ奪われた結果だった。 「って、召喚してないってゆーかアンタ自分が向こうに召喚されたんじゃんかー!」 「うるさいうるさいうるさーい! エクスプロージョン!」 瞬間、ゴーレムの巨体が大爆発をおこす。 吹き飛ばされたフーケは「あ~れ~」と塀の向こうまで飛ばされていった。 かくしてフーケのたくらみは未然に防がれ、学院の平和はウィザード・ルイズの活躍によって守られた。 「盗賊退治お疲れ様ですルイズさん。ところでまたハルケギニアを揺るがす大事件が」 「ちょ、アンゼロット!? 私は今戦い終わって余韻に浸ってる最中で―――!」 「諦めた方が良いと思うぜ嬢ちゃん。どうせ最後には働かされるんだから」 空間からにょろりと突き出た腕に掴まれて拉致されるルイズとデルフリンガー。 明日はガリアかアルビオンか。アンゼロットにコキ使われるルイズに休息の日は無い。 頑張れルイズ。負けるなルイズ。 いつかハルケギニアを狙う魔王(推定)を倒して、アンゼロットから開放されるその日まで!
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ルイズとその使い魔として召喚された猫耳少女・南波の2人は、学院の温室でキノコ狩りをしていた。 「あったー! ほら見て見て!」 そう言って南波が差し出したキノコは、鼻にツンとくる異臭が漂い傘が蕩けかけていた。 「……真面目にやる気あるの?」 「えー!?」 取ってきたキノコを投げ捨てたルイズに不満そうな南波。 「それにしてもタバサちゃんも来ればよかったのにね」 「用事があるって言ってたから仕方ないわよ」 そう肩をすくめたルイズだったが、最初からタバサを誘ってはいなかったのだ。 「きっと残念がってるから今日の話はしないようにしましょ!」 「ルイズちゃんやっさしー!」 「そっ……、遭難したー! まだ2レスしか経ってないのに遭難しちゃったよ!」 「うるさいわね。落ち着きなさいよ」 「私のせい? 『そうなん』です。なんちゃっ――」 「落ち着けー!」 この状況で笑えないギャグをかました南波に、ルイズは容赦無く魔法で吹っ飛ばした。 遡る事30分前。 南波はルイズの手を取って今にも崩落しそうな崖の先端部に生えているキノコを取りに行き……、 お約束通り崖が崩落、2人は断崖絶壁から落下した。 さらにその下を流れる激流の川に流されて、熱帯性の植物が繁茂するこの場所に漂着し現在に至る。 「ここどこ? ジャングル?」 「私が聞きたいわよ!」 ――グキュルルル~…… 朝食から数時間、そろそろ昼時という事もあって南波の腹の虫が盛大に泣き声を上げた。 「お腹空いたなあ……。そういえば、さっき崖で取ったキノコ……」 南波が懐からキノコを取り出した瞬間、ルイズはそれを神速の速さでひったくり、 「! ……あんたほんっとーにキノコを見る目が無いわね! この毒々しい色、臭い! どう見ても毒キノコよ! こんなキノコのために私達遭難したの!?」 しかし南波はそんなルイズの言葉に耳を貸さず、 「……ルイズちゃん。そう言ってこのキノコ独り占めする気なんでしょ!」 「!?」 と一口で丸呑みしてしまい、案の定、 「お……、美味しい……」 ばったり倒れ伏してしまった。 「嘘おっしゃい!」 キノコの毒を受け、南波は脂汗を垂らしつつうんうん呻いている。 「大変!! 凄く苦しそう! 毒キノコを食べた時の治療法は……」 ルイズは慌ててなぜか持っていたサバイバルに関する書物から治療法を得ようとするが、その内容は彼女の想像を超えていた。 「……じ、人工呼吸!?」 思わず赤面するルイズだったが決意を固め……、 「そうね、今は一刻を争うんだから仕方ないわ……こ、心の準備が……」 ……たものの、やはり照れからか顔を背けてしまった。 「よし、今度こそ……」 「あ~、死ぬかと思った!」 今度こそ人工呼吸をと思った瞬間、何事も無かったかのように南波がむっくり起き上がった。 「治るの早いわよ!」 「???」 「ルイズちゃん、ごめんね。まさか本当に毒キノコだったなんて……」 「まあ、体が何ともないならいいんだけどね」 体調は回復したものの空腹までは回復しなかったようで、南波は何か食料が無いか周囲を見回していた。 「あ~、お腹空いたなあ……バナナだ!」 とある木にバナナがなっているのを発見はしたものの、実には到底手が届かない。 「でも高いなあ。あ、棒と箱が落ちてる!」 南波は棒を振り回してみたり箱の上でジャンプしてみたりしたが、バナナには手が届かなかった。 その様子を見かねてルイズが箱の上に乗り棒でバナナを叩き落すと、南波は心底感心した表情で手を叩き、 「ルイズちゃん、凄ーい!」 「私にこんな恥ずかしい格好させて……。わざとやってんじゃないでしょうね!?」 ルイズは怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「お腹は膨れたけど、私達帰れるのかなあ……」 俯いて深刻な表情の南波だったが、バナナの皮の山を背にしているためいまいち緊張感に欠ける。 「だ、大丈夫よ! 帰れるに決まってるわ! ……それにいざとなったら私がいるんだから」 自分の言葉に赤面したルイズだったが、 ――アーアアー 「ターザンだ!」 その時既に南波の興味は遠くから聞こえてきた謎の声に向いていた。 「は?」 「凄い! ターザンって本当にいたんだ! こっち来た!」 そして垂れ下がった蔓にぶら下がって2人の前に現れたのは――、 「タバサちゃんにそっくり!」 どう見てもタバサです。本当にありがとうございました。 じー…… さっ じー…… さっ 顔を覗き込んでくるタバサの視線からルイズは必死に顔を背ける。 「なぜ目を逸らすの」 「タバサ、誘わなかったから怒ってるんでしょう?」 「私はターザンだからわからない。でも近々素敵な事が起こる」 肩を竦め無関係なふりをしてさらりと不吉な発言をするタバサ。 「ひぃいいい!!」 「ルイズちゃん、ターザンと知り合いなんて凄い!」 「だから、あんたはわざとやってんの!?」 そんな2人を南波はやはり心底感心した表情で目を輝かせて見つめ、ルイズはまたも怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「こっち」 そう言ってタバサは藪をかき分け2人を先導し始める。 「帰り道も知ってるなんて流石ターザン!」 「……何にせよ助かってよかった……」 「でもルイズちゃんと2人で遭難するの、結構楽しかったよ。また一緒に遭難しようね!」 「まったく、縁起でもない!」 南波を魔法で吹き飛ばしたものの、少し嬉しいルイズだった。 (いつまで歩くのかしら) ルイズがそう思い始めた時、突然ラバサが立ち止まった。 「? タバサ?」 「迷った」 『ええええええ~!??』 「てへ」とでも付けそうな口調でのタバサの発言に、南波・ルイズの悲鳴がジャングル中に響き渡った。 その時、 「ミス・ヴァリエール~!」 そう3人に向かって大声を張り上げる人影――コルベール――がゆっくり降下してきた。 「ミス・ヴァリエール、心配させないでください」 「ミスタ・コルベール……」 「しかし、まさか隣接する人工ジャングル温室に迷い込むとは……」 「何でそんな温室があるのよ!」 翌日……、 「それでね、ターザンがね!」 救出後に書いてもらったサイン片手に心底楽しそうに昨日の話をタバサにしている南波の様子を、ルイズはジト汗を垂らして見ていた。
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まったく同じ言葉、あるいは名称であっても、時としてそれはまるで正反対であったり、または異なる意味となることもある。 ここに一人の少女がいる。 名をルイズという。 メイジでありながら、魔法が使えない。 成功率ゼロ。 そんなところから、ひと呼んでゼロのルイズ。 この二つ名は生涯変わることはなかったけれど、ある時期から、それはまったく異なる意味を持つようになる。 それは何かというと…………。 「……あんた、何?」 召喚した使い魔と契約を終えた後、ルイズは引きつった表情で、己の従者となった生き物に向かってつぶやいた。 珍しい生き物ですな、などと教師は言っていたが、ルイズ自身はあまり喜べずにいた。 召喚したその生き物はどこをどう見ても、すごそうには見えなかったからだ。 一言で言うなら、丸い魚チックな生き物だった。 本当に真ん丸いのだ。 よく言えば可愛いが、悪く言えば間抜けな姿だった。 ほえええ……。 鳴き声もひどく間抜けだった。 ふよふよと空中に浮かんでいるが、動きも鈍そう、というかちいとも動かない。 使い魔のルーンが刻まれている時もぬぼうっとしたままだった(ちなみにルーンは額あたりに)。 有効性を期待するのは恐ろしく不毛な予感がする。 「あんた、なんて生き物?」 ルイズはこのおかしな使い魔の顔(というか、体全体が大きな顔みたいでもあるが)をのぞきこみながらつぶやく。 ――……くーよん。 「へ?」 その時、ルイズの頭に何か声のようなものが響いた。 驚いてキョロキョロとしていると、とんでもないことが起こった。 使い魔が。 召喚したばかりの使い魔が、消えてしまったのだ。 まるで、煙か何かのように。 「……はい?」 ルイズは事態が飲み込めず、しばらくぼーぜんとしていた。 他の生徒たちから、嘲笑を投げつけられるまで。 朝になって、ルイズは重苦しい気分でベッドから目を覚ました。 気分だけでなく、体全体も重苦しい。 ベッドで泣き伏し続け、そのまま眠ってしまったようだ。 自分ではわからないが、目が真っ赤になり、その下には痛々しい隈ができている。 せっかく召喚したはずの使い魔。 それが、逃げてしまった。 というより、どこかへ消えてしまった。 そこまで思い出し、ルイズは思考を止めた。 頭の中を、毒蛇がのたくっているような、嫌な気分になってきたのだ。 胸がむかむかして、吐き気もしてくる。 そのくせ、心がざわつき、落ち着かない。 ゼロ。 成功率ゼロ。 ゼロのルイズ。 そんな言葉が頭の中でぐるぐるとまわっていた。 何だか、わけのわからない気持ちになってきた。 悔しいのか、悲しいのか、それとも情けないのか。 あるいはその全てなのか、そのどれでもないのか。 ルイズはのろりのろりと身を起こして、何気なく机の上を見た。 ペン刺しのペン。 するりと抜いてみる。 先がとがっている。当たり前だが。 ルイズは、ぼけっと手にしたペンを見ていたが、ふと妙な気持ちになった。 急に、ペンを自分の腕に突き刺してみたくなったのだ。 手の甲でも平でも、どこでもいい。 とにかく自分の体を傷つけたい衝動に駆られた。 そして、ぐいとペンを振り上げてから、そのまま動かなくなった。 (何やってんのよ……!) すんでのところで、行動を制止する。 そんなことをして何になるのか、自分が痛いだけである。 ルイズはいらだつ気持ちを抑えきれず、ペンを床に叩きつけた。 これというのも、あの忌々しいボールのせいだ。 いきなり幽霊みたいに消えやがって。 契約したご主人様を無視して。 おかげで、自分がどれだけ恥をかいたか。 覚えていろ。 もし見つけたら、 (どっかにいるってんなら、出てきなさいよ!! ただですまさないんだから!!!) ルイズは心の中で、叫んだ。 ぼうん。 「うひゃ!」 いきなり、間抜けな音がした。 ひっくり返りそうになりながら、ルイズは何事か目を凝らす。 そして、本当にひっくり返った。 そこには消えた使い魔が、相変わらずの間抜け面でふよふよ浮かんでいたからだ。 「出てきなさい」 小声でルイズは呼びかけた。 ぼうん。 音を立てて、ルイズの前に使い魔が現れる。 「うーーん……」 何回かのテストの後、ルイズは3つのことを理解した。 1、使い魔は逃げたわけでなかった。 2、使い魔はしばらくすると消えてしまう。 3、使い魔はルイズの声(正確には意思)に応えて姿を現す。 「けっこうすごい感じではあるんだけど……」 しかし、だからどうだという気もする。 呼び出せばすぐに出てくるところは便利だが、 (こいつに何ができるか、よねえ?) ただそこでぬぼっとしているだけなら、普通の猫や鼠でも召喚したほうがまだましである。 (でもまあ、ここは……) ひとまず契約は成功していたというところが大事だろう。 (このことを、ミスタ・コルベールに説明しとかないと) そう考えるとじっとしてはいられない。 ルイズは乱れた髪を簡単に整え、部屋を飛び出した。 途中でキュルケと出くわしたが、無視する。 今は相手にする気分でなかったし、そんな暇もない。 コルベールのもとに向かいながら、ルイズが先ほどと異なる棟のざわめきを感じていた。 先のそれが暗いマイナスなものなら、これはプラス。 これから、いいことが起こりそうな気がする。 そんな予感がむくむくと膨らんでいた。 ただし、そのいいことが、ルイズにとってはよくても、他の人間にはどうであるのか。 ルイズはそんなことは考えもしなかったのだけれど。 きっかけは何だったのか。 思い出せばくだらない言い争いが原因だったのかもしれない。 気がついた時には、食堂でギーシュと言い争いになっていた。 だが、決定的なスイッチとなってしまったのは、このやり取りだろう。 「君のその、丸っこい使い魔に何ができるというんだい?」 「さあね? でも、あんたの死ぬほど不細工なモグラよりは可愛いんじゃない?」 売り言葉に買い言葉とはいうけれど……。 それはギーシュをぷっつんさせるには十分すぎる威力を持っていた。 何だかかんだで、ルイズはギーシュと決闘することになってしまった。 ルイズは、不思議と負ける気はしなかった。 それは予感というよりも確信に近かった。 何故そんなことを思ったのかは、謎であるが。 決闘の前にギーシュが何か言っていたが、ルイズは聞いていなかった。 それよりも、早く使い魔を呼び出したくてうずうずしていたのだ。 そんなルイズのなめきった態度に、ギーシュはマジ切れしたのだろう、お得意の青銅ゴーレムを呼び出し、いきなり突進させてきた。 ルイズは目の前に出されたご馳走を出され、さあどうぞと言われたような気分で、 「出てきなさい!!」 使い魔を呼んだ。 主人の呼びかけに応じた使い魔は、この時通常とは異なる行動に出た。 いや、今までは呼び出しても何もしなかったのだが。 ほええええええええええええ!! 使い魔はその口から、何かきらきらと光る粒子のごときをものを吐き出したのだ。 その美しい、宝石の雪のようなものが周囲に降り注いだ瞬間、ギーシュのゴーレムはぼろりと崩れた。 「え? な? なんで??」 うそだろという顔つきで、ギーシュはまたゴーレムを出そうとする。 が、無駄だった。 形を形成する前に、ゴーレムはぼろぼろと土くれになってしまう。 しまいには、それさえも起こらなくなった。 硬直するギーシュの真横を、強烈な爆裂が通り過ぎた。 ルイズの失敗魔法。 普段ならば嘲笑の対象であるそれは、この時のギーシュには悪魔の凶器であった。 「……まいった」 「な~に~? 聞こえんな~~~」 かすれる声でいうギーシュに、ルイズは死ぬほど邪悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと広げた右手を突き出す。 「具合でも悪いのかしら~~? じゃ、下手糞で悪いけど、回復の魔法かけたげるわ」 煙をあげながら倒れるギーシュを見下ろしながら、ルイズは自分の使い魔の能力を理解しはじめていた。 何故、負ける気がしなかったのか。 それは、もしかすると契約を通じて、無意識ながら、使い魔の能力がルイズに伝えられたのかもしれない。 いずれにしろ、 (これはいけるかも……!!) ルイズは笑った。 ルイズが使い魔の能力の、本当の凄まじさを理解するのは、のちにフーケ事件と呼ばれる騒ぎでのことだった。 土くれのフーケと呼ばれる盗賊。 それが学園の宝物庫を狙ってきたのだ。 とはいえ、その時ルイズはそんなことなど知るよしもなかった。 ただ、夜散歩をしていたら、いきなりばかでかいゴーレムに出くわしたのだ。 最初はかなりびびっていた。 けれど、それだけにその後はかなりリラックスしてしまった。 使い魔の吐き出す輝く粒子。 それはあっという間に空中高く舞い上がり、ゴーレムをギーシュと時と同じように土に戻してしまった。 もっとも粒子は風の流れのせいか、宝物庫までとんでいき、防御のためにかけられている魔法も消してしまったが。 ちなみに、何か怪しい人影がいたので失敗魔法でぶっ飛ばしたらそれはミス・ロングビルだった。 ロングビルは爆発をまともに食らって全治三ヶ月の怪我をおい、ルイズはギーシュの一件もあり、謹慎処分をくらう羽目になる。 宝物庫の中は無事だったので、謹慎は短くてすんだのだが。 謹慎を食らっても、ルイズはちっともこたえてなかった。 何故ならば、自分の使い魔がどれだけすごいか、頭ではなく魂で理解できたから。 (メイジの実力を見るなら、使い魔を見ろ……か。なるほど、私にぴったりじゃない!) 部屋でじっとしてても、ニヤニヤと笑いが止まらない。 あの使い魔、原理はわからないがあれの吐き出す粒子は魔法を消去してしまう力がある。 ドットクラスのギーシュくらいのものなら、それなりでしかないだろうが、あの馬鹿でかいゴーレムさえ苦もなく無効にできるのだ。 自分の魔法が消された時の、ギーシュのあの顔! 思い出すだけでも傑作だ! 翼をもがれた鳥みたいにぶざまな姿だった。 ゼロのルイズ。 その二つ名は大嫌いだった。 でも、これから思い切り好きになれそうだ。 「そうよ、私はゼロのルイズ」 ルイズはくすくすと笑う。 (でも、ゼロなのは私じゃない……。ゼロになるのは……) 自分以外の、あらゆるメイジだ。 後年、ゼロのルイズの名は永く広く語り継がれることになる。 いかなるメイジも、彼女の前ではゼロになる。 ただ、虚無の属性をのぞいては。
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二人のルイズ 「なによ、これは……」 彼女にとって今日は記念すべき日になるはずだった。 自らの系統を見定め、より内容的に特化した二年への進級試験も兼ねた春の使い魔召喚の儀式。 何度も失敗し、今度こそは意を決して杖を振り下ろした先に現れたのがコレだった。 「なんだあれは!? 「まさかゼロのルイズが」 「信じられない」 周りの生徒たちが驚愕から喧々囂々の騒ぎを巻き起こす中、ルイズはまるで瀕死の魚のように口をパクパクさせることしかできなかった。 出来ればドラゴンやグリフォンのような幻獣であれば言うことはない、虎や獅子でも大歓迎だ、それが無理なら犬猫でも構わない、いやオールドオスマンのようにネズミでもしょうがないし、さっき頭上を飛んでいった雀でもこの際贅沢は言うまい。 そんな気持ちで挑んだサモンサーヴァントだからと言って、よもやこんなものが出てくるとはルイズは夢にも思わなかった。 それはまず巨大だった、ルイズのすぐ前の生徒が呼び出した風竜の幼生よりも尚大きい。いや大きさだけなら今年と言わずこれまでこの学院で呼び出された使い魔のなかでも最大の部類に入るに違いない。 次にぬめぬめしている、濡れ光る緑の皮膚は周囲の光を反射して微妙な光沢に照り輝いている。 最後にそれは不気味だった、足を全く動かすことなく地面をまるで滑るように動き回り、その巨大な瞳はピクリとも動くことはない。 だが結局のところ、その生物を表すにはただ一言で事足りる。 「なんで、こんなでっかい蛙が出てくるのよ……!」 そうルイズは蛙が苦手だった、もはやルイズ自身覚えていないが幼少の頃に刻まれたトラウマがぬるぬるべたべたした生物を忌避させるのだ。 しかしそんな自分に呼び出されたのは自身がもっとも苦手としている蛙。 それも超特大サイズ。 ルイズは泣き出したくなった、始祖ブリミルよ。私が何か貴方のお怒りに触れるようなことをしたのでしょうか? 貴方は私に貴族だと言うのに魔法の才能を与えなかったばかりか、私がもっとも嫌うものを終生のパートナーにせよと申すのですか? もし私の言葉が届くのなら…… 「もう一度、召喚をやり直させてください」 「駄目です、使い魔召喚の儀式は神聖なものですから」 ほとんど無意識から出たルイズの魂からの叫びは、すぐ隣に居た輝く教師に一言で切って捨てられた。それはそうだいちいち生徒が使い魔が気に入らないからと言って再召喚させていてはきりがないし、それにコルベールの目にはルイズがあたりを引いたように思えた。 なにしろこれほど巨大な蛙である、ルイズの学友が普通の手のひらに乗るような蛙を召喚したことも分かるように一目で見て桁外れの存在だと分かる。 コルベールは教師としてルイズに自らの才能に自信を持って欲しかった、多少本人が呼び出した使い魔を嫌っていようとこのご立派な使い魔は周囲の者たちの目にルイズが「ゼロ」でない証として映るだろう。 実際、普通のアマガエルを召喚したモンモラシ家の一人娘などはロビンと名づけた自分の使い魔とルイズが呼び出した蛙とを見比べて、嫉妬交じりの視線を送っている。 「分かりました……」 コルベールの言葉にルイズは諦めたように頭を垂れた、上目遣いに見上げればルイズの前で彼女の使い魔は候補は間抜けな面を晒している。 その間抜け面を見ているとだんだん憎らしくなってくる、コイツが出てきたばっかりにと言うどうしようもならない運命に対する憤りが現実の相手として現れたことで心のなかで形を成す。 「五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」 コルベールにレビテーションで浮かばせて貰いながら、ルイズははんばヤケクソな気持ちでその呪文を唱える。 新たなる運命の扉を開く、その呪文を。 「きゃっ!?」 「なんだっ、なにが……」 ――その場で何が起こったのか理解できた者はいなかった。 ルイズが巨大蛙に口付けし、その左手にルーンが刻まれた途端に巨大な蛙は猛烈な光と共に塵が砕けるように消えてしまったのだから。 光と塵の乱舞が収まった時、ヴェストリ広場に集まった生徒たちはその声を聞いた。 「守らなきゃ……」 それは涼やかで悲しげな、硝子で出来た鈴のような声だった。 ルイズを含めた全員は、その声に聞き覚えがあるような気がした。 「あの人が愛した世界を、守らなきゃ……」 そこには一人の少女が立っていた。 儚げな姿で、まるでレビテーションでも使っているように地面から僅かに浮きながら。 静かに、その場に佇んでいた。 ルイズは愕然とする。 着ている衣装こそ周辺の国々で見たこの無いものだが、少女の姿はあまりにも見慣れたものだったから。 見慣れたものでありすぎたから。 「あなた……誰…………?」 ルイズは、毎朝鏡のなかで出会うもう一人の自分に向かって問いかけた。 桃色の髪の少女は、僅かに笑って。 「わたしは――グロリア」 己に与えられた名を応えた。 それがゼロと馬鹿にされ続けてきた虚無の魔法使いと、朽ちて尚約束を守ろうと足掻いていた竜との出会いでした。 二人のルイズがこれからどのような物語を紡ぐのかは、我々には知ることは叶いません。 ならばせめて祈りましょう。 傷つき続けた彼女たちがもう二度と傷つくことの無いように。 惨禍に巻き込まれることがないように。 せめて栄光の賛歌〈グロリア〉を贈りましょう。 ――願わくば、ああ願わくば、その旅路の最果てが幸福なものでありますように スクラップドプリンセスから竜機神No7 グロリア を召喚。 戻る